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2011年度春学期ARP2:S-meme02「文化被災」

S-meme02「文化被災」

担当教員
五十嵐太郎(東北大学大学院都市・建築学専攻教授)
ゲスト講師
山内宏泰 (リアス・アーク美術館主任学芸員)
飯沼勇義 (郷土史家)
担当助手
斧澤未知子(せんだいスクール・オブ・デザイン研究員)

【概要】

メディア軸スタジオでは、現在におけるメディアの状況を考察しつつ、実践としては最終的に仙台から発信する文化批評誌「S-meme」をつくることを目標に掲げている。 S-meme二号目となる2011年春学期は、東北を直撃し、SSDの拠点である仙台にも大きな被害を与えた東日本大震災を受け、文化がどのように被災したか、その記録と再生への道を取り上げた。 ゲストの山内宏泰氏には、自身も被害を受けるとともに避難所としても使用されたリアス・アーク美術館の震災直後の状況とともに、災害時に文化施設が陥ることになる現在の文化施設を取り巻く管理体制のありようについて、飯沼勇義氏には郷土史家として長年仙台平野の津波の歴史を研究してきた成果のレクチャーをしていただいた。

【成果物】

ARP2
ARP(アジャイル・リサーチ・プロジェクト)として開講された2011年度春学期スタジオでは、受講生はそれぞれの視点から「文化被災」を記録する文章を書くことが課題として課された。また、装幀に関しては一号に引き続き、仙台印刷団地の若手有志と卸町TRUNKのメンバーからなる「製本部」の協力の下、受講生でグラフィックデザイナーである佐藤悠子さんがリードを取りつつ進められた。第一回目の装幀(ここに第一回目リンクがあると嬉しいです!)に引き続き、今回はハサミ・カッター・ペーパーナイフなどを用いて切り開きながら読む「袋とじ」製本の仕様となった。
ARP2
S-meme02制作の第一歩として、第一回講義(キックオフミーティング)が行なわれた。このミーティングでは担当教員である五十嵐太郎より二号のメインテーマとなる「文化被災」についテーマ設定に至った経緯と趣旨の説明がされた後、受講生各々が被災後の体験について話した。ここで話した内容を元に、「文化被災」寄稿内容の案を練ることとなった。
ARP2
「文化被災」を特集するにあたり、一人目のゲスト講師として気仙沼にあり自身も被災し避難所として使用されることになったリアス・アーク美術館の主任学芸員である山内宏泰氏にお越しいただきレクチャーしていただいた。美術館や博物館などの文化施設が被災した際に陥る状況と現在の文化行政の問題点などについてお話いただいた内容は、文字起こしされS-meme02のコンテンツの一つとなった。
ARP2
二人目のゲスト講師として、郷土史家として長年仙台平野の歴史津波について研究し、津波災害を警告していた飯沼勇義氏にお越しいただきレクチャーしていただいた。このレクチャーについても、受講生の一人によってレポートがまとめられS-meme02のコンテンツとして収録されることになった。これらのレクチャーはテーマについて受講生が理解を深めるためだけでなく、文化批評誌として制作されるS-meme02の重要なコンテンツとしてもみなされている。
ARP2
講義でレクチャー、原稿のエスキスが行なわれる一方、装幀の制作打ち合わせも同時に進行した。今回の装幀の制作には受講生の佐藤悠子さん、一号の装幀でも協力してくださった製本部の菊地充洋さん、中山敏宏さん、印刷をお願いする今野印刷の今野賢治さんが関わりミーティングを繰り返し、細部を詰めて行った。震災の影響を受け活動拠点としていた東北大学校舎が使用できなくなったため、ミーティングは街中のコーヒーショップで、全員の都合の合う午前の時間帯を見計らいながら行なった。
ARP2
第1回目のS-meme02の装幀打ち合わせでは、震災を受け起きた紙の供給混乱を反映した、普段は本文用紙に使用されない様々な紙をシャッフルして使用する案などのいくつかの案が製本部から提示された中から、文化被災という状況の「記録を保管するフォルダのような」装幀として「袋とじ」を案として実現すべく進められた。
ARP2
袋とじ製本をするに当たり、本文には何回切った後に出てくるページかというヒエラルキーが生まれてくることになる。全ての袋を切った後にもそのヒエラルキーの跡が見て取れるようにと、本文には縦書き二段組、縦書き三段組、横書き一段組の三種類のレイアウトが用いられた。この案は、装幀班に加わったグラフィックデザイナーの佐藤さんの案から派生した。こういった、本文の内容執筆とは別に、本を作る上でのアイデアまで含めて「S-meme制作」となる。
ARP2
こうした協力のもと出来上がったS-meme02は、袋とじを切り開きながら読む、非常に一回性の強い装幀となった。批評誌としての面白さを保つよう仙台から発信することの意味を考える一方で、普通に流通する書籍としては取り上げにくい前衛的な装幀に挑戦できるところがS-memeの面白さであるといえるだろう。
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