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2010年度秋学期Fラボ1:石上スタジオ

建築のあたらしいイメージ

講師
石上純也 (石上純也建築設計事務所)
担当助手
加茂川智哉(せんだいスクール・オブ・デザイン研究員)

【概要】

新しい時代の新しい建築を模索するときに、それを表現するイメージを見つけ出す事はとても重要な事だと思う。そのイメージがわかりやすく、なおかつ、新鮮であれば、多くの人がまだ誰も見た事のない建築をなにか具体的なイメージとして思い描くことができるかもしれない。たとえば、ル・コルビュジェであれば、車や飛行機や船を新しい時代の新しい建築のイメージとして引き合いに出した。また、メタボリズムであれば、生命活動や新陳代謝をイメージにしている。これからの時代のありかたとこれからの建築のありかたが、なにか具体的なイメージで適切に表現されたとき、時代は一歩先に進むかもしれない。

【成果物】

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建築以外のものから建築をイメージするのは重要だと思っている」と言う石上先生の出題意図より、受講生には建築とは全く異なるジャンルの東北大学研究者に対して、建築的な価値観を持ってヒアリングを行なってくる事が課された。受講生はそれぞれ、深く興味を抱いている東北大学の研究者の方々のところへ赴き、その研究内容のヒアリングをし、調査報告にまとめた。
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一つ目のヒアリングでは、東北大学大学院環境科学研究科・環境科学専攻太陽地球システム・エネルギー学講座地球物質・エネルギー学分野の土屋範芳教授へのヒアリングを行なった。土屋先生は主に地殻に含まれる水について研究されている方で、受講生は先生のお話をうかがい、地球規模の水環境、エネルギー循環に建築を組み込む事に可能性を感じた。
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二つ目のヒアリングでは、東北大学大学院理学研究科・理学部地球物理学専攻の藤原均准教授へのヒアリングを行ないました。藤原先生は超高層物理学、地球・惑星超高層大気の研究などについて研究されており、受講生は特にオーロラに関する質問を行ない、イメージを膨らませた。
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エスキス1
今回は3つのチームに分かれて案を進めた。Team A−階層の概念を捉え直す「鉛直な奥性のある住宅」と「エネルギー交差点としての地表面」という2つの提案。Team B−「蜃気楼」「大きな垂直の輪」「微差」「夢」という4つのイメージをもとに提案。Team C−「生き生きとした状態」というイメージから「365日のワンルーム」を提案。これらに対して石上先生からは「建築の専門ではない人にもわかるようなものである事。/だれもが快適に過ごす事ができるものである事。/自分がやりたいイメージをはっきりさせる事。/ヒアリングをふまえて提案に説得力を持たせる事。」というコメントが寄せられた。
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エスキス2
前回のエスキスで案を進めた。Team A−「遠い事/近い事」をテーマにした。Team B−「地上と地下を等価に扱う」事を案の中心にした。Team C−「生き生きとした状態」のイメージから「人が気候の変化によって主体的に動く家」を提案した。案に対し、石上先生から「適切なイメージを見つける事、ダイアグラムを建築に落とし込む事。(Team A)」「地上と地下のそれぞれの利点とその間を移動する事ができる事の面白さをより深く考える事。(Team B)」「どのような気候でも、人が快適に生き生きと活動している具体的なイメージとその裏付けを提案する事。(Team C)」というコメントが寄せられた。
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エスキス3
スタジオ内最終講評。Team A−「バブル」のイメージから建築を提案。Team B−「オーロラ」からイメージした「ゆらぎ」をテーマに「一体化する住宅」を提案。Team C−「生き生きとした状態」のイメージを元に提案。これらの案に対し、石上先生からは「建築の普遍性をプレゼンするための案の方向性を早く固める事。(Team A)」「『ゆらぎ』の中で生活する事イメージを具体的にする事。(Team B)」「自分たちが『生き生き』と呼んでいる状態とは何なのか。明確な境界(壁)が無いと今までの価値観が全く変わる、その時住宅はどうなるかを考える事」というコメントが寄せられました。
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また、スタジオ内最終講評では、全体に対して「誰が見ても共感できる物を提案する事。/誰が見ても元ネタ(例えば「泡」「オーロラ」)をイメージできるような物を提案する事。/案に至るまでの過程を説明できるようにする事。/案に説得力を持たせるための設定などを考える事(例えば、住人の設定)」というコメントも寄せられました。これらのコメントを受けて、受講生は成果発表会に向けた最終的な成果物を仕上げました。
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Team A
「気配と痕跡、水平性、大きさからなる海岸性居住」<イメージ:海岸>広大な海岸には、波が砂につくりだす波形や、行き交った人々の足あと、漂流物などを次々と発見する楽しさがある。<気配と痕跡>海岸には、打ち寄せた波で水たまりができる。貝殻や海藻が点在する。それらは、自然環境が偶然もたらす気配と痕跡の例である。一方、焚き火の跡や車輪の跡、漂流物からは他者の気配と痕跡を感じ取る事ができる。<水平性>空と海に挟まれる事で生まれている水平性。<大きさ>視界を遮るものが少なくどこまでもひろい。<Architecture>薄くて大きい建築。内部は広大なワンルームで、床に大小様々な穴が空いている。
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Team B
「ゆらぎの時間」<イメージ:オーロラのゆらぎ>夜空を彩るオーロラは、超高層大気の原子や分子が宇宙空間で、電子や陽子との衝突によりエネルギーを与えられ、光として放出したもの。オーロラのメカニズムとヒーリング効果から、幻想的、神秘的、空気の揺らぎ、光のゆらぎなどをイメージにした。ゆらぎは形だけでなく、生活のやすらぎ、心地よさにも結びつく。<ゆらぎ>住宅に「ゆらぎ」を入れる。住む家ではなく、癒しを求めたい時にだけ訪れる自由な空間。不特定の人がやすらぎのために共有するスペース。本来の住宅のように暮らす形ではないが、ゆったりとするという共通の思いで、一定の時間を共有し、一緒に住む。
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Team C
断てない建築<イメージ:いきいきしている建築>今回目指したのは21世紀における「いきいきしている建築」の新しいイメージである。様々な技術を用いて住宅の内外を遮断して成り立っている現代の建築を新しい建築のイメージで置き換える物を提案したいと考えた。<いきいきしている建築のイメージ>建築空間が想定した条件を越える事:空間の中に人間が想定できない物を取り入れる。カオスが空間を変容させる事:天候や風向き、湿度など想定できても天気を完全に予測する事はできない。外のダイナミクスが動きを支配するダイナミクスを越える:人は「動く」事によって危険を回避しているが、外的状況が人間の「動き」を越える。
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「2010年度秋学期Fラボ1:石上スタジオ」活動内容一覧

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-2011.01.24-
-2011.01.10-
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-2010.11.29-
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