「コンベンション機能から見た創造都市仙台の可能性」
- 講師
- 小野田泰明(東北大学都市・建築学専攻教授)
- 小杉雅之 (株式会社日本政策投資銀行)
- 宮地義之 (株式会社日本経済研究所)
- ゲスト講師
- 吉良山寛 (日本コンベンションサービス株式会社)
- 服部三雄 (財団法人仙台観光コンベンション協会)
- 杉崎栄介 (横浜市芸術文化振興財団)
- 佐藤芳治 (東北大学都市・建築学専攻助手/都市デザインワークス代表)
- 坂口大洋 (東北大学都市・建築学専攻助教)
- 担当助手
- 保科陽介 (せんだいスクール・オブ・デザイン研究員)
【概要】
現在の日本、中でも東北地方は著しい人口減少に苦しんでいるが、世界全体では都市人口の増加は依然進行中で、都市間競争も激しさを増している。もはや100万都市は珍しいことではなく、都市自身が様々な戦略を駆使しなければ、世界の富はその上を通り過ぎ持続的再生すらおぼつかない。このように競争がグローバルに展開する中で、都市が自律するために国際的な交流人口を増加させる戦略が脚光を浴びている。そこで観光と並んで注目されているのがコンベンションビジネスだ。 本スタジオではそうしたコンベンションを題材に、丁寧なベンチマークを通して、都市が競争力を保ちつづけるための条件を見出していく。デザインの前段としての「条件」をデザインする「プレ・デザイン」の手法を学ぶスタジオである。
【成果物】
- 【現状・可能性】庄司
- 「本日はお忙しい中お時間いただきまして、みなさんありがとうございます。まず本日のながれですが、まずはじめになぜコンベンションやその枠組みに必要性を感じたかの話をさせていただきます。その次に各都市のベンチマークスタディを行っておりますので、そちらを発表させていただきます。その結果まだ中間発表の段階でありますが、私たちが考えるこういったコンベンションの展開ができるのではないかという話をさせていただきます。最後までよろしくお願いいたします。」「それでは、わたくしから仙台の現状についてお話しさせていただきます。急速な少子高齢化が加速する中、仙台市もその例外ではございません。しかし世界では共通の問題を抱えながらも、高齢化の別の側面である成熟化をうまく生かして持続可能な都市づくりを成し遂げている例があります。それらの都市のベンチマークスタディを行いまして、仙台市の問題点を具体的に洗い出し、どのような展開が可能か考えてみました。まず、仙台の現状ですが、先ほどのお話しがありました高度な教育機関とコンパクトで発展的な仙台市と歴史と自然がうまくかみ合っていいない。しかし、その中心に国際センターがあります。これらを人が集まり循環させる機能を持たせることが重要だと考えました。ハード面、ソフト面においてこれらを結節点という実用化できるコンベンションセンターがあればいいのではないか。また、仙台市の市街地と施設が繋がっていないので、コンベンションを機会に仙台市に滞留している観光交流人口を施設に持っていく機能を果たせる重要な場所ではないか。例えば、コンベンションにソフト面・フレームワークを持たせることによって大学と都市と歴史と自然が繋がって循環することによりコンパクト市街地と杜の都のエコロジカルな都市空間が形成可能ではないかと考えます。また、TRUNKや横浜のBANKARTの様なものを差し込んで、人がここに集まるような活動的な場所とすることでシビックプライドが生まれグローバルな評価が得られるようなものができるのではないかと考えました。」「次に各都市のベンチマークスタディを発表します。」
- 【都市比較】東
- 「こちらは、都市比較の資料になります。仙台、横浜、福岡、海外でサンアントニオ、バンクーバー、メルボルンの6都市を調査しました。横浜は東京に次いでコンベンションの数が多いということで選んでいます。福岡は仙台と同規模な都市ですが横浜に次いでコンベンション数が多いということで選んでいます。サンアントニオ、バンクーバー、メルボルンは海外の都市でコンベンションビジネスが成功しているという理由で選んでいます。」「基礎データについては、緑の部分が都市の面積を表しています。仙台は人口100万人、横浜は小さい面積ではありますが人口が368万人と人口密度が高くなっています。メルボルンは面積も大きく、人口も多いということです。」「次に、都市能力はホテル数を調査しています。仙台はホテル数が159、部屋数が13000とあります。横浜、福岡、バンクーバーは同じような規模のホテル数です。」「次に、コンベンションセンターを中心に見た航空写真です。仙台は国際センターを中心に半径2KMの範囲を表した図です。こちらは国際センターから仙台駅までちょうど2KMくらいです。その中に東北大学の萩ホールや仙台城址があります。14KM離れて展示会場の夢メッセがあります。黒丸がコンベンションセンターを行えるような施設、赤丸が展示会場・大ホール、緑の丸が観光資源を表しています。他の都市では、福岡、サンアントニオ、バンクーバーなどはコンベンションセンターの周りにそのような施設が集中してあることが分かります。」「次に、建物の比較に移ります。」
- 【施設比較】泉
- 「では、6つの都市のメインのコンベンションセンターとして使われている建物について比較します。」「仙台は[仙台国際センター]、今この会議が行われている場所です。建設されてから20年です。横浜の[パシフィコ横浜]は、日本で一番大きく、昨年のAPECの会場にも使用されました。福岡は、[福岡国際会議場]という名前で、展示ホールのマリンメッセと福岡国際センターと3つ並んでいます。サンアントニオは、リバーウォークに建てられ、観光都市としての人気も高まっています。バンクーバーは、2010年の冬期オリンピックの時にメディアセンターとして使用されました。メルボルンコンベンション&エキシビジョンセンターは、太陽熱や雨水の再利用などエコをかなり意識した建物です。」「表をご覧ください。面積は、建物の延面積ですが、図のように横浜とサンアントニオが大きく、残念ながら仙台は一番小さくなります。そして、建築費は、建てられた時期や改修費の金額だけのところもありますが横浜の860億、バンクーバーと続きます。」「コンベンションの開催に大切なのは、[ホールの収容人数]と[会議室の数][展示ホール]の3つ。ホールは、横浜、メルボルンと5000席を超えますが、仙台は1/5。バンクーバーは常時の席ではなく稼働で6225席を確保。展示ホールは、仙台の場合[夢メッセ]がありますが、そちらは含んでいないので、他都市に比べると極端に少ないスペースになります。」「建物の特徴としては、仙台の場合、城を現代風にアレンジして、会議室内の天井に青葉山の山並みや仙台湾のさざ波を、横浜も[波と風と光]をテーマに、福岡も博多湾をイメージしています。サンアントニオは、川辺に建物がありますのでボートで入場できたり、バンクーバーは地元の廃材を使ったインテリアでシンボル的存在。メルボルンは2010年の国立建築賞-公共建築賞 など様々な賞を受賞しています。」「建物の大きさを図にしてみると、どの建物も形にこだわりがあります。仙台は、逆に小ささが目立ちます。」「運営は、日本の場合は、市からの委託で、財団が管理というのが多く、仙台も福岡も財団です。横浜は、民間の運営なので、コンベンション会議以外の開催や飲食店も多く、ホテルも併設されています。サンアントニオは、市が所有して運営。バンクーバーは、カナダ政府が所有し民間会社が入って運営。メルボルンもビクトリア州が所有し民間会社が運営です。」「次に、交通で成功している福岡のシミュレーションをいたします。」/dd>
- 【シミュレーション】中木
- 「国際会議、国際大会がどのように行われたのか、またどのように行われるのかを見ていきたいと思います。」「福岡の場合、福岡で行われた某医学系の国際会議で参加人数が30000人と大規模なものです。そのスケジュールと開催場所、中核となるコンベンション施設から開催場所までの距離を記載しました。」「福岡は国際会議場、サンパレス、マリンメッセ福岡、百年講堂、シーホークホテルを使用し、すべて電車で以上できる距離にあります。国際会議場、サンパレスとマリンメッセ福岡は300メーター以内にあります。日数は七日間に、5つの施設を利用し、29会場で行われています。展示は7日間通して行われ、学会は間の3日間に集中的に開催されるスケジュールであり、施設間、観光資源、アフターコンベンション等など容易に行き来ができるプログラムとなっています。」「仮にこのプログラムを現状仙台で行う場合、仙台国際センターを中核として9つの施設で行うことになります。仙台国際センター、川内萩ホール、メディアテーク、エレクトロンホール、エルパーク、三つの駅前ホテルでおこなうことをシミュレーションできます。国際センター・川内萩ホールは容易に行き来できるのですが、駅前のホテルまではタクシー等で移動する必要があり、展示を行う夢メッセまでは20kmと大変離れているため相互の連携は容易には行えない恐れがあります。」「これらを解消し、さらに大学との連携強化を念頭に置いた場合は以下のプログラムが考えられます。国際センター・川内萩ホール周辺にコンベンション機能を拡張するスペース、展示を行えるホールを設置しそれらを超える規模のものに対しては東北大学川内キャンパスを利用するプログラムです。」
- 【プロポーザル】赤垣
- 「ここまでの理想のコンベンションについてのリサーチをどのように応用できるかを発表させていただきます。」「現状は、機能や施設の連携が全く取れておらず、例えば、仙台国際センターから川内萩ホールへは地形的にアクセスが難しくなっております。また、このような豊かな自然が伝わらない形状となっております。また市街地との連携もとれていません。既存の機能同士のつながりをしっかりとることが大切ではないかと考えました。それをつなぐのがコンベンションなのではないでしょうか。」「初めは観光者への配慮ですが、観光ナビゲーションと大学のショーウィンドーとなるものを地下鉄の駅の目の前に置きます。そうすることで、ナビゲーションとなり、訪れた人を振り分け自然や歴史へのナビゲーションを行います。また、大学のショーウィンドーの様なものを置くことで大学を街へ開くきっかけとなるようにします。大学へのゲートの役割ともなります。」「次にコンベンションへの配慮として、必要な施設として会議施設と展示施設が足りないというのがリサーチから分かりました。まず、会議室は大学の施設をうまく活用することを考えました。例えば国際センターから川内萩ホールまで新しい道を造り、国際会議で国際センターに来た人たちを自然豊かで歴史的な道を通じて川内萩ホール、大学の施設まで導きます。萩ホールは自然に開かれていてレセプション会場として利用できると考えています。展示会場は3000㎡規模のものを新しく造ることを考えています。3000㎡以上の展示会場があると国際的な会議も誘致しやすいというリサーチもありますので、川沿いの景観を生かして新しいものを造ることを計画しました。」「3つめは、市民の力を高める工夫をすることです。まず、国際センターの中の財団法人仙台国際交流協会を表に出すことを考えています。そして、アートNPOのヘッドクオーターをつくることを考えています。官民学が連携できる中立的な機関です。最後に、レストランやカフェを川沿いにつくります。地元素材を使って自然景観をうまく活用します。このような3つの施設を造ることで、市民や観光客が集えるオープンな共有スペースが駅の周りに広がっていきます。そうすることで、市民やNPOの立場から芸術の発展について研究や情報の発信の場となります。ここのシステムが回るようにするためにはこのような民間の施設が必要だと考えました。」「今は施設の中に閉じてしまっているコンベンションですが、それが機能するコンベンションになることで仙台の発展につながるのではないでしょうか。このような豊かな自然景観と歴史と教育施設がうまく連動することと、市民の力が合わさることによって、この場所が発信性のある持続可能な創造都市仙台となっていくのではないでしょうか。」「以上発表を終了させていただきます。ご静聴ありがとうございました。」
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ1 メディア軸
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ2 環境軸
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ3 社会軸
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ4 コミュニケーション軸
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ5 国際軸
- 2014年度 春学期 Interactiveレクチャー
- 2014年度 春学期 クリエイター・イン・レジデンス
- 2014年度 春学期 Fラボ3
- カレンダー
- 新・港村
- あいちトリエンナーレ分校
- SSDe in 金沢 五日間集中ワークショップ「建築に触らない!?公共建築のリデザイン」
- 2010年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2010年度秋学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2010年度秋学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2010年度秋学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2010年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
- 2010年度秋学期Fラボ1:石上スタジオ
- 2010年度秋学期Fラボ2:平田スタジオ
- 2010年度秋学期Interactiveレクチャー
- 2011年度春学期ARP1:災害のデータスケープ
- 2011年度春学期ARP2:S-meme02「文化被災」
- 2011年度春学期ARP3:建築家による復興支援活動の研究
- 2011年度春学期:特別講座「復興へのリデザイン」
- 2011年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2011年度秋学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2011年度秋学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2011年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
- 2011年度秋学期Fラボ1:石上スタジオ
- 2011年度秋学期Fラボ2:平田スタジオ
- 2011年度秋学期Interactiveレクチャー
- 2011年度秋学期ARP4:仙台市津波浸水域リデザインのための基礎調査
- 2012年度春学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2012年度春学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2012年度春学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2012年度春学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2012年度春学期Fラボ3
- 2012年度春学期Interactiveレクチャー
- 2012年度春学期クリエーター・イン・レジデンスWS
- 2012年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2012年度秋学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2012年度秋学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2012年度秋学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2012年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
- 2012年度秋学期Interactiveレクチャー
- 2012年度秋学期Fラボ4
- 2012年度秋学期ARP5:災害のデータスケープ2
- 2012年度秋学期ARP6:復興地域におけるスマートコニュニティ
- 2013年度春学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2013年度春学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2013年度春学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2013年度春学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2013年度春学期ARP7:災害のデータスケープ3
- 2013年度春学期ARP8:統合化インターフェースとしての公共スペースのデザインについて
- 2013年度春学期Interactiveレクチャー
- 2013年度春学期CiR:「瞬間をとじ込める椅子」
- 2013年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2013年度秋学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2013年度秋学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2013年度秋学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2013年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
- 2013年度秋学期Fラボ5:「メディア・インスタレーションの未来」
- 2013年度秋学期Interactiveレクチャー
- 2014年度春学期PBLスタジオ1:メディア軸
- 2014年度春学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2014年度春学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2014年度春学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2014年度秋学期Fラボ3:エネルギースマートなイノベーション都市“仙台の明日”を考える
- 2014年度春学期CiR:文学館を再編集する
- 2014年度春学期Interactiveレクチャー