ポスト復興の地域中心としての庁舎
- 担当教員
- 小野田泰明(東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻教授)
- 講師
- 松永桂子(大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授)
- 担当助手
- 岩澤拓海(せんだいスクール・オブ・デザイン研究員)
【概要】
東日本大震災で甚大な被害を被った宮城県山元町。被災から3年が経とうとする今も行政と住民の間には未だ遠い隔たりがある。
地域の復興に加えて少子高齢化・人口の流出・産業の衰退など、震災以前に抱えていた課題とも向き合っていく必要がある。震災をきっかけとして表出しつつある様々な課題を抱える自治体において、新たな地域中心としての行政の場―庁舎はどうあるべきか。本スタジオでは、中山間地域での小さな産業を起点とした地域の再生の考え方を手がかりとしながら、復興の活力をとりこみ地域社会と共存する新しい庁舎と被災以降の新たな地域のあり方を考えた。
【成果物】
山元町は海と広大な平野、里山に恵まれ、昔ながらの集落の営みを残しながら、県下有数のいちごの生産地としても知られる。震災後、主要産業であったいちご農地の津波による壊滅的被害や、JR常磐線の不通といった理由によって町の人口は減少の一途を辿っている。また、震災による被害にとどまらず、震災以前からの課題とも向き合う必要に迫られている。
フィールドワーク、公民連携・公共財マネジメント・産業振興事例の把握、被災以降の状況調査を踏まえ、「庁舎」という場の新たな在り方を考えた。
提案の検討と並行して、町の現状を知るため山元町で地域の再生に関わるひとに会いヒアリングを行った。
検討を進め、ハード=大きな計画だけでは、いまの課題解決に寄与することが難しく、ハードと相補的な関係を成すソフト=小さな仕掛けの必要性に到達した。離散的で単発的な町の人びとの活動を把握し、リソースの相互連携を図るためのプラットフォーム=ウェブサイトを計画した。
庁舎を核としながら、ヒト・資金・空間・時間の再生に寄与する産業をてがかりとする拠点計画と、そのプレーヤーとなる人をつなぐプラットフォームが互いに機能を補完しながら、震災以降の新たな町での庁舎の役割、未来の姿を実現して行く。
- 山元町とは
- 宮城県亘理郡山元町は、仙台市の南側に位置し、仙台市街から車で約40分。震災前の2月には16,695名いた人口が現在では、13,339名と約20%減少しており、そのうち65歳以上が31.6%と高齢化も進行している。イチゴ、りんごに代表される農業、ホッキ漁に代表される漁業は震災で壊滅的な被害を受けた。こうした分析を通じ「人口減少」「少子高齢化」「産業衰退」という大きな3つの問題が明らかとなった。
- 小さな仕掛けから大きな動きを導き出す
- ①庁舎を中心に農業、産業、観光を産業振興公社等を含む民力を活用し一つに取り纏める計画(山下)、②中学校の6次産業と遺構観光等の拠点化の計画(坂元)というハード主体の計画を考えた。一方でハード=大きな計画の実現には時間を要し、そこに至るまで地域をつなぎとめるソフトが必要だと考えた。そこで、大きな計画と時間・空間において相補的な関係を成す、小さな仕掛け―現在活躍するNPOや市民サークル等の活動をWEB上で一覧できるプラットフォームを計画した。ヴァーチャルな存在がフィジカルな交流を補完し、リアルな役場地区の拠点機能へと繋げる
- BIGPICTURE-ふたつの” 産業振興公” 民館
- 「BIGPICTURE(大きな計画)」は以下の二つの計画からなる。一つ目は町域に新たな「横」の性格を与えることである。現状、南北12km東西6kmの町域において、上のダイアグラムで示したように4つのエリアの縦割り構造が目立つ。これが交流の柔軟性を阻害していると仮定し、「単発的交流」「町民の生活」「継続的交流」という3つの横軸を挿入した。これにより、エリアごとの性格が明確になると共に、それぞれの横軸の拠点となるコンパクトシティの役割が鮮明化する。二つ目は、そのコンパクトシティの中核に、産業振興公社等が運営に携わる公共施設を設置することである。具体的には、山下の新庁舎と将来的な施設の検討が必要な坂元地区の中学校に、新たな試み(道の駅や農業の六次産業化拠点など)を含めた様々な機能を集約し、町内外から人が集まる場を作る。町内で積極的に活動する団体の活動拠点およびプレスルームとしての活用も想定している。
以上二つの基本計画を軸に、人・資金・空間・時間を意識して、事業スキームや10カ年でのスケジュールなどを策定した。
- 町の現状
- 震災以降、町民と行政の距離はまだ離れたままである。町民と行政がともに再生のために動いていくことができる場としての庁舎の在り方を探る私たちにとって、3年という時間が経過する中でも解消されない距離感は大きくかつ現実的な課題であった。そこで、町の実際と人々の思いをより深く知るため、ヒアリングのために町に赴いた。
- ヒアリング
- ヒアリングをさせて頂いた方のお話から、町の中にある距離感を肌で感じられた。この現実を受けとめ、地域の再生のために何が必要で何が可能かを再度検討し、大きな計画に加えて、住民と行政の間の距離を架橋するようなソフト面での提案も同時に必要だと考えた。人々の話を伺うことで、地域、住民、行政いずれにも寄りそうことのできる提案の必要性に気付かされた。
- small action-山元町 の人と活動の動きまとめサイト「山元町のヒトこと」
- 山元町には町の復興に向けて活動している団体や個人が多数存在する。ある人が本業を持ちながら他の活動にも携わる、ひとりダイバーシティもみられる。こうした、多様で複属的な活動は地域の産業再生・コミュニティ再生に不可欠であり、これらの人と活動の連携と多面的なリソースの活用を促すためのプラットフォームと町内外に「新着情報まとめサイト」のように情報発信する機能が必要ではないかと考えた。このプラットフォームは行政と活動する住民が相互に協力しながら運用する事で、民(住民、NPO、地域企業等)と行政の間の距離を埋める端緒とし、また外部には山元町の認知を図ることもできる。地域の再生の第一歩は小さくはじめる事small actionから始まる。
- BIGPICTUREとsmall actionの相補関係
- 未来に向けた鳥瞰的な計画として「BIG PICTURE」が存在し、それを実現するための最初の一歩、継続のため日々の歩みを「small action」で実現して行く。
「small action」で積み重ねた事実は、「BIGPICTURE」の計画の提案の解像度を上げ、さらには大きな計画の新たな可能性を拡張して行く。
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ1 メディア軸
- 2014年度 春学期 PBLスタジオ2 環境軸
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- 2010年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
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- 2011年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
- 2011年度秋学期Fラボ1:石上スタジオ
- 2011年度秋学期Fラボ2:平田スタジオ
- 2011年度秋学期Interactiveレクチャー
- 2011年度秋学期ARP4:仙台市津波浸水域リデザインのための基礎調査
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- 2012年度春学期PBLスタジオ2:環境軸
- 2012年度春学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2012年度春学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2012年度春学期Fラボ3
- 2012年度春学期Interactiveレクチャー
- 2012年度春学期クリエーター・イン・レジデンスWS
- 2012年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
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- 2012年度秋学期PBLスタジオ3:社会軸
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- 2012年度秋学期PBLスタジオ5:国際軸
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- 2012年度秋学期ARP6:復興地域におけるスマートコニュニティ
- 2013年度春学期PBLスタジオ1:メディア軸
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- 2013年度春学期ARP7:災害のデータスケープ3
- 2013年度春学期ARP8:統合化インターフェースとしての公共スペースのデザインについて
- 2013年度春学期Interactiveレクチャー
- 2013年度春学期CiR:「瞬間をとじ込める椅子」
- 2013年度秋学期PBLスタジオ1:メディア軸
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- 2013年度秋学期Fラボ5:「メディア・インスタレーションの未来」
- 2013年度秋学期Interactiveレクチャー
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- 2014年度春学期PBLスタジオ3:社会軸
- 2014年度春学期PBLスタジオ4:コミュニケーション軸
- 2014年度秋学期Fラボ3:エネルギースマートなイノベーション都市“仙台の明日”を考える
- 2014年度春学期CiR:文学館を再編集する
- 2014年度春学期Interactiveレクチャー