2011.06.30
コミュニティデザイナーの山崎亮先生をお招きする特別WS「コミュニティを育成する」を東北大学青葉山中央棟DOCKにて6月26日(日)実施しました。
山崎さんはコミュニティをデザインするプロフェッショナルとして全国の地域のまちづくりに取り組んできました。今回は「震災復興のためにコミュニティデザインは何が可能か」というタイトルでお話頂きました。「地域に入らないと本当に何ができるかは言えない」というコンセプトから、今回のレクチャは実現可能性よりもむしろ話題提供としてお話頂きました。
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まずはコミュニティデザインの開拓や教育などに取り組むstudio-Lについての紹介。はじめは公園や庭の設計から、ハードからソフトのデザインへ徐々にシフトし、地域の人たちとの対話から仕事の種類がどんどん増えていったそうです。中山間、離島の仕事が多いのも特徴です。
山崎先生はコミュニティデザインにできることとして3つの提案をされました。
いずれもが地縁コミュニティやテーマコミュニティなどさまざまなコミュニティをベースにしたデザインやマネジメントの事例とそれに基づくアイデアです。
まずひとつめは「被災者同士がつながるための理由をデザインすること」です。
とりわけ仮設住宅地では屋外に出るきっかけをつくる事が重要で、今回のようにコミュニティのつながりを維持したまま仮設住宅地に入居できない被害規模の場合は、マネジメントの仕組みでテーマを軸としたコミュニティをつくることができるのではないか。
たとえば有馬富士公園に市民参加型のパークマネジメントを提案した事例では、公園の「学芸員」、あるいは管理者と利用者のあいだの「キャスト」として、市民サークルやNPOを呼び込んだのだそうです。またコンセプトの共有のために冊子も作成されました。この仕掛けは延岡駅前のまちづくりにもいかされているとのことでした。
さらには住民が計画づくりに参画し、計画づくりの過程でやる気のあるチームやリーダーをつくる事が重要だと言います。
住民参加型で総合計画を作成した海士町では、ワークショップを重ねて計画を作る過程でコミュニティを育てられました。行政の総合計画に加え、別冊として「住民が自分たちでできること」をまとめたのだそうです。その際チームに分けて実践し自ら情報発信することで互いに競い合わせたのが上手くいったのだそうです。
さらには過度な過疎化が進む中山間地域を日本の問題の「最先端」地域と捉え、「集落支援員養成講座」による教育も実施されました。
ふたつめは「支援者同士がつながるためのフレームをデザインすること」です。
「オレもオレも」が乱立すると度重なるヒアリングで窓口である行政が疲弊するとして、さまざまなプロジェクトを編集し整理し、支援の側のコミュニティをつくりたいと提案されました。たとえばBerkana InstituteとBaSiC Initiative、Architecture for Humanityなどを結びつけ、それぞれがより高度に活躍できるスキームを提案したいとのこと。
みっつめは「復興のプロセスに応じたプロジェクトをデザインする」ことです。
緊急情報の翻訳支援活動「Honyaquake」のようにすぐやるべきことと、震災孤児の支援「こども芸術の家」のようにずっとやるべきことを上手くマネジメントするべきではないか。
その他、震災復興+designの取り組みとして、ボランティアのゼッケンや「新しい母子手帳」リーダー育成プロジェクトなどを紹介して下さいました。
まとめとして、公共的な事業を自主的に実践する市民が求められる、縮小する社会においては、市民が主体的に公共に参加するような仕組みのデザインが求められます。しかしこの仕組みを上手くつくることができれば、参加を通じて「公共の担い手」とその「市民のまとまり」を育成することができるのだと述べられました。
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休憩をはさんでテーブルごとのディスカッションによって山崎さんへの質問を考えてもらいました。
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後半は山崎さんに一問一答形式で質問に答えてもらいました。
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Q:住民の地域への主観評価が低いときは?
A:外部からの客観評価が高いことを意味するので他と比べるなどして理解してもらう。
Q:市民サークルなどの「キャスト」はどれくらいで集めるのか?
A:半年から1年。短いときは三ヵ月。
Q:キャストのモチベーションや地域システムを継続させる工夫は?
A:たとえばフェスティバルなどをやってキャスト同士をつなげる。またコーディネーターを二人つけサポートさせる。
Q:産業をデザインするアイデアについて。
A:当の本人達が新しいものをつくりはじめるようなモチベーションのデザインが大事。
Q:「稼ぎ」と「仕事」のちがいについて。
A:個人的には一緒のものであるように感じている。
Q:いま最も力を入れているコミュニティデザインは?
A:様々あるが、地域が育っていくためにいずれも「5年で出て行く」ことにしている。
Q:見捨てることはあるか?
A:ない。
Q:住民と話をするコツは?
A:事前に膨大な量の勉強を日々している。住民が言葉にできないアイデアを知識を組み合わせて言葉にしてあげるのが仕事とも言える。
Q:土地に残った人と新しく入ってくる人をいかに結びつけるのか。
A:Uターンがキーパーソンではないか。双方が歩みよらなければならない。
Q:コミュニティデザインの結果、地域が外から入りづらくなるのでは?
A:情報発信をちゃんとしていけば大丈夫。
Q:震災復興における時間のスパンについて。あるいはすぐ取り組まなければならない課題について。
A:コミュニティデザインは万能ではない。緊急な課題はそれを優先すべき。
Q:仮設住宅の問題について。
A:仮設住宅に見られる様々な問題は、すでに全国の住宅地で現れている問題の縮図であるように思える。
Q:被災地の流動性について。
A:地縁型のコミュニティとテーマ型のコミュニティとを組み合わせる相乗効果に効果が期待できるのではないか。
Q:福島などの偏見について。
A:偏見は確かにある。しかしそれ以上に人間は多様である。
Q:まちに入りこむ程度について。
A:入り込み過ぎて地域の中に定着し続けることは必ずしもよくない。同化せずあくまで外部から提案をするスタンスも重要。
Q:声の大きな人の意見をどう統合するのか。
A:ケースバイケースで「人組み」を考える。
Q:関心のうすい人をいかにのせたか。
A:その人の仲間の影響が大きい。
Q:行政について。
A:行政は公共の担い手で専門家。専門以外のことをやらせないようにする。単純な行政批判はしない。一方で行政も変わらなければならない。行政が単独でやるのでなく、市民を支援する「行政参加」の方法を組み立てる。
Q:建築学生になにができるか。
A:バランス感覚をもっといかせる。建築学生はさまざまなパラメータを統合することができる。提案できるものはハードだけに限らない。
Q:消え行く集落について。
A:消え行く集落の「看取り」をきちんとする必要がある。そこにしかない文化、知見のアーカイブ。
公共空間を活用していた地縁コミュニティが近代化の過程で霧散した。
Q:達成感のある瞬間は?
A:想定しなかった「いいこと」を住民自らがはじめているのを目にしたとき。
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冒頭あまり熱くならないようにクールに話したいとおっしゃっていた山崎先生でしたが、しだいに熱が入る熱い議論となりました。
(阿部)
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ディスカッションのメモ
→ 0626_A1.pdf[pdf:4.2Mb]
質問用紙
→ 0626_A4_1.pdf[3.5Mb]
→ 0626_A4_2.pdf[3.1Mb]
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ムービーはこちら
→ http://cat-vnet.tv/category120/123/123_001/123_003_0001.html
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1)講義内容について
テーマ:コミュニティを育成する
日時:6月26日(日) 13時~
講師:山崎亮[studio-L代表/京都造形芸術大学教授/コミュニティデザイン]
司会:本江正茂[東北大学工学研究科都市・建築学専攻准教授]
内容:レクチャ+ディスカッション+質疑応答
場所:東北大学青葉山キャンパスセンタースクエア中央等DOCK
2)次回講義について
テーマ:歴史を伝承する
日時: 7月18日(月祝) 13時~
講師:足立裕司[神戸大学大学院工学研究科建築学専攻教授]
後藤治 [工学院大学工学部建築都市デザイン学科教授]
司会:野村俊一[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻助教]
場所:東北大学青葉山キャンパスセンタースクエア中央等DOCK