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特別WS #7「仮設都市を建設する」

2011.09.03

大和リース代表取締役社長の森田俊作さんとグリーンインフラが専門の中野和典先生をお招きするWS「仮設都市を建設する」を東北大学工学部中央棟DOCKにて、8月27日[土]に実施しました。



まずは石田先生から今回のWSのテーマについてお話し頂きました。
兵站によるファーストエイドを担う仮設の技術と、持続的でパーマネントな生活環境を目指すグリーンインフラの技術という、いわば両極の技術から、これからの都市環境デザインの方向性を議論できればとのことでした。

森田社長からはまず応急仮設住宅の定義に関わる基礎的な概要についてご説明頂きました。応急仮設住宅とは、避難所から復興までの一時居住用の住居であり、災害発生から20日以内に着工され、原則2年供与であることなどがその特徴です。

国内の主な激甚指定災害を見ていくと、概ね3年に1回の頻度で大規模な応急仮設住宅を要する災害が発生しています。今回のような地震津波の他にも、火山の噴火、台風による豪雨災害などでも、仮設住宅が必要とされてきました。過去の事例を見ていくと2年で復興が果たされたケースはむしろ少なく、ミスマッチが見受けられます。三宅島の噴火から大規模供給体制が確立され、新潟県中越地震で寒冷地対策が進むなど、災害が起きるたびに改善が重ねられています。

今回の東日本大震災に対しては、阪神淡路大震災を経験した人間として被害の大きさを思いめぐらし、すぐに正確な情報把握に奔走したそうです。3月19日には最初の応急仮設住宅を岩手県陸前高田市に着工することもできました。

一方で、応急仮設住宅の課題と準備のあり方として、大規模で広域の災害に対してはやはり限界があることや、復興までの中長期間居住せざるを得ない利用実態とのミスマッチなどの課題もあるそうです。また、広域震災に備えた連携・対応のあり方について、応急仮設住宅の備蓄・供給に関する法整備や、国と自治体との役割の明確化、官民恊働による「ストックマネジメント」の導入などを課題として挙げて頂きました。

森田社長は災害大国である日本が防災のフロントランナーとして、世界の今後の災害対策に貢献できるのではと考えているそうです。未来のプロトタイプとして、わずか260秒で展開するインフラフリーの災害救援拠点ユニットEDV-01もご紹介いただきました。

中野先生からはグリーンインフラをご紹介頂きました。

グリーンインフラストラクチャとは90年代に米国で生まれたコンセプトで、生態系サービスという自然生態系によるさまざまなライフサポート機能を利用したものです。たとえば屋上緑化などで都市を緑化することで、ヒートアイランド現象が緩和されるのみならず、景観の美化や、蒸散発散の促進、雨天時の表面流水量の低減などさまざまなサービスが期待できます。

グレイインフラのように雨水を速やかに排除しようとするのではなく、局所的な雨水を発生源で管理し、地下浸透によって濾過された地下水を蓄え、雨水のオーバーフローを防ぐ、といったグリーンインフラの考え方には将来性が感じられます。

たとえば、庭や公園を利用して雨水を一時的に貯蓄し、地下浸透を促すバイオリテンションという考え方もその一例です。舗装された駐車場の周囲にこうしたレインガーデンを整備した事例もあります。このレインガーデンはマニュアル化されており、個人参加も可能で、庭先で日常的にガーデニングなどに利用されたりもしています。

また生態影響のミチゲーションとして、人間社会と生態系の共生のためのバッファゾーンとなる安定池や人工湿地、ビオトープなどを設置することも有用です。春に解け出た融雪剤を受け止める湿地帯を併設した空港の事例や、バルト海の富栄養化を防止するために設置されたデンマークの人工湿地の事例などもあります。

表面流式人工湿地によってエネルギーを使わずに汚水処理をする事例もあります。霞ヶ浦のビオパークでは湖水を濾過しながらハーブを市民が育てているそうです。

デンマークなどの家庭用人工湿地による過程排水処理システムの事例では、ひとりあたり1〜3㎡あれば過程からの排水を処理することができます。

これらのグリーンインフラを、居住エリアから里山・里海エリアのエコトーン(移行帯)に適切に配置することで、水環境と一体となったサステナブルな街をつくることができるかもしれません。被災地がこれから復興していく際に、これらのグリーンインフラをまちに織り込んでいくことで、サステナブルな都市環境に変えていけるのではないかと期待しているそうです。

レクチャを受け、テーブルごとのディスカッションにて講師への質問を考えてもらいました。

質問:撤去しなければならない仮設住宅について、どうすればより高い生活環境を与えることができるのでしょうか。またそれはグリーンインフラによって実現できるのでしょうか。
森田:2年の想定でオーダーされるものの、実態としてはそれ以上の期間利用されるケースがほとんどです。オーダーさえされれば3〜4年のスペックのものを供給することができます。グリーンインフラも使ってみたいですね。防災や災害対策のフロントランナーとして、イノベーションは追求し続けたいと思っています。

質問:仮設住宅の他にも、何か災害にいかせる商品はあるのでしょうか。
森田:たとえば蓄電池は、現在は個人で持つには高いけれども、大型のものを公共施設や大型施設に備えておき、マイクログリッドを整備することはできるかもしれません。いざというときに、そこに行けば電気がある、というようになればいいと思います。

質問:EDV-01の商品化の可能性はありますか。
森田:正確に言えばコストが高すぎてまだ売りものになりせん。しかしこれは儲けるためではなく、機能のパッケージとして本当に必要なものは何かを考えて開発しました。リチウムイオン電池などの生産コストが下がっていけば、あるいは可能性が見えてくるかもしれません。私は小さいころ「鉄腕アトム」が携帯電話をつかっているのを見た記憶がありますが、このように将来にあるべき商品像を未来にむかって示していきたいのです。

質問:グレイインフラからグリーンインフラへのソフトランディングの道程についてお聞かせください。
中野:例えば施設が老朽化するタイミングなどで導入するのがよいのではないかと思います。また都市と過疎地でも違います。グリーンインフラは人手がかからないので、過疎化していくような地域によいのではないかと考えています。今回、震災をうけ、もう一度まちをつくり直していく際に、少しずつ導入されればと期待しています。

質問:グリーンインフラにはどんなデメリットがあるのでしょうか?
中野:自然に任せているので、季節によって植物のふるまいが違うなど、コントロールしきれない部分があります。その不安定な部分を我々の持つテクノロジーでカバーできるといいですね。

質問:どうすればグリーンインフラが普及するのでしょうか。
中野:新しいコンセプトなので浸透していないということはあります。生態系サービスの経済的な価値を説明できないと、メンテナンスのコストなどと比較できません。一方最近ではCO2に交換価値がつきました。目に見えないサービスについて価値を認め、マーケットにのせれるようになっていけばと考えています。

(阿部)

ディスカッションのメモ →
http://sendaischoolofdesign.jp/wp-content/uploads/2011/08/110827.pdf

1)講義内容について
テーマ:仮設都市を建設する
日時:8月27日[土]13:00-
講師:森田俊作[大和リース代表取締役社長]+中野和典[東北大学大学院工学研究科土木工学専攻准教授]
司会:石田壽一[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻教授]
場所:東北大学工学部センタースクエア中央棟DOCK
内容:レクチャ+ディスカッション+質疑応答

2)次回講義について
テーマ:環境に応答する
日時:9月4日[日]13:00-
講師:中谷礼仁[早稲田大学創造理工学部建築学科准教授]+宮本佳明[大阪市立大学大学院教授/宮本佳明建築設計事務所主宰]
司会:五十嵐太郎[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻教授]
場所:東北大学工学部センタースクエア中央棟DOCK

3)修了要件について
特別講座「復興へのリデザイン」の修了要件は出席とレポートを総合して判断する。出席はディスカッションまで参加して出席とみなすものとする。レポートは9月16日[金]17:00までに阿部 abeatsushi@archi.tohoku.ac.jp までメールで提出すること

レポート課題:特別講座「復興へのリデザイン」を聴講し、①印象的な回の議論(複数可)を整理した上で、②それを踏まえた復興のアイデアを適切な図版とともに示せ。

追記:#9「水際を再生する」中止により出席回数が不足する受講生は別課題により対応いたします。SSD事務局までご相談ください。

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