メニュー

Archive

[Interactiveレクチャー #3]SSDハウスレクチャー森川嘉一郎

2012.01.28

2012年1月24日(火)、仙台市卸町にてInteractiveレクチャー、第3回目SSDハウスレクチャーが開催され、「おたく文化とデザイン」と題して森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)にお話を頂きました。

森川氏は早稲田大学建築科石山研究室で建築を学び、在学中に『エヴァンゲリオンスタイル』という本でエヴァンゲリオンについてデザインという視点で執筆したり、秋葉原の都市論を雑誌『10+1』に書いていらっしゃいました。その後、ベネチアビエンナーレ第9回国際建築展で日本館コミッショナーとして、都市がおたくによって変わっていくという都市論を展示したり、明治大学で、日本の漫画、アニメ、ゲームなどをアーカイブする活動を行っている森川氏に、サブカルチャーの歴史の一端や現在置かれている状況、その分析について、ご講演頂きました。

まず、おたく文化としてのアニメ、漫画などが、芸術の歴史の中でどう位置づけられるかというお話でした。2009年、『国立メディア芸術総合センター』の建設が検討されていましたが、この「メディア芸術(Media Arts)」という英語では、アニメの殿堂と揶揄されていたような展示内容と結びつかないが、アニメ、漫画ではなく芸術と名称に入っていれば、予算がつくという意図が見えます。結局、予算執行が停止されたこの計画の問題は、アニメ関係者は、美術館で展示されるということに反発していた点であると森川氏は指摘します。性描写漫画販売規制をめぐっては敵対しているのに、海外へ輸出する芸術として売り出そうとする風潮に対して、反発するのは当然のようにも思えます。
しかし、森川氏は、もし国立メディア芸術総合センターの完成図として発表された絵が117億円かけても良いと思わせるようなデザインであったなら、執行停止には至らなかったのでは、という気がしているとのことです。たった一枚の絵ですが、意外に重要で、その点においてデザインがやはり大事なのです。

過去、頭脳労働でなく手工業的に作るものは芸術とは見なされませんでしたが、その概念は今の時代にも通じています。産業革命により大量生産が可能になり、量産品を考える創造的な人と、それを模倣する人という分離が起きました。模倣というのが、創造性の対極にあるとすれば、過去にないようなものを生み出していくことが前衛芸術の至上命題になっていったのです。前衛芸術はだんだん枯渇していき、美術と関係ないものの引用をするようになっていった例として挙げられるのが、アフリカのお面や工芸品からインスピレーションを得たピカソです。いわば錬金術ですが、その流れはA. ウォーホール、秋葉原のおたく向けのフィギュアを巨大化させた村上隆につながります。

続いて、キャラクターが社会でどういった位置付けであるか、についてお話頂きました。
主にデザインを扱う雑誌『アイデア』が2009年に漫画『よつばと!』などを手がけるよつばスタジオの特集号を刊行し、おたくの人に向けて作っているデザインを特集していました。この号の売れ行きは好調で、2011年には続編が出たほどです。またファッション雑誌『ヴォーグ』でも漫画のファッションをどう取り入れるかといった記事が出たり、青木淳建築設計事務所がアルマジロ人間というキャラクターを生み出してプレゼンテーションに使うなど、魅力的なキャラクターは人々に受け入れられやすいが、キャラクターを効果的にデザインするということについて美大や芸大ではメソッドとして教えてはいないのです。海外に展開することよりも、魅力的なキャラクターを生み出してきたアニメや漫画の歴史を解釈し、メソッドを築きあげる必要があるというのが、森川氏の持論です。

アメリカでトヨタのCMに使われるほど、人気がある初音ミクというキャラクターについても、過去のさまざまなアニメや映画によって、文脈が形成されています。また、ガンダムは30年以上前のキャラクターですが、2009年にお台場に実物大(18m)で立てられ、動員目標を3倍近く上回った415万人を集める商品力があります。その理由をについて森川氏は、それまでのロボットアニメは男気のある熱血漢と彼に寄り添う美少女という構図が多かったのに対して、ガンダムの主人公のアムロは機械いじりが好きで女の子にあまり興味がなく、内向的だという自意識を持っている読者にとって親近感が湧くキャラクターだったことと、王子様タイプのシャアが大切にしていた少女を奪うという内容が、人気者のスポーツ少年よりガンダムのプラモデルを組み立てる特技で注目を得るという、アニメと同じ状況が現実に起きた、ということが30年を越える人気につながっている、と推測していますが、やはり体系的に研究するためにも国内にアーカイブを作る必要があると感じていらっしゃいます。


国会図書館は日本国内で出版されたすべての出版物を収集していますが、カバーは廃棄して保管しています。漫画にとってカバーがないのでは資料として使えないのです。また初めて『おたく』という言葉が使われた号や、後にメディア芸術賞や手塚治虫賞を受賞した岡崎京子のデビュー作が掲載されている号も欠号しています。さらに海外でも大変な人気がある宮﨑駿氏の原画などは高額な値がついて、海外から買われています。まるで浮世絵と同じ現象が起きており、研究対象を国内に確保するために、駿河台の明治大学に漫画アニメの複合アーカイブ『仮称:国際漫画図書館』を計画していらっしゃいます。マンガや同人誌の個人図書館、有志により保存されている業務用ゲーム機、自身がコミッショナーを務められたベテチアビエンナーレの展示物などが主な展示物となります。この計画はもともと改修で実現するつもりだったそうですが、新築案がでてきて、良い絵を描かないとならないと感じているそうです。
おたくにもそうでない人にも受け入れられるデザインとは、ということで半年以上悩んでいるという森川氏より、皆も考えて欲しいという投げかけと、おたくについての素朴な疑問についてお答え頂き、本年度のインタラクティブレクチャーは幕を閉じました。

メニュー