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特別WS #5「地域を再興する」

2011.08.04

現大船渡市長の戸田公明氏と神戸大学大学院工学研究科建築学専攻教授の塩崎賢明氏をお招きする特別WS「地域を再興する」をせんだいメディアテーク1Fオープンスクエアにて7月23日(土)に実施しました。



東日本大震災で物においても人においても甚大な被害を被った岩手県の大船渡市長で、東北大学の建築学科の出身でもある戸田公明氏には被災地として大船渡市が現在どのような被害状況に置かれており、そこからどのように復興への道筋を計画しておられるのか、震災への対応と復興に向けた活動についてお話いただいた一方で、阪神淡路大震災とその「復興」を現地でつぶさに観察された塩崎氏には、その過程で起こりえる光と影の部分について、またその影をなくすためにいかに既に経験した阪神大震災の復興から学べるかをお話していただきました。

東日本大震災で人的被害448名(2010年国勢調査時の大船渡市人口は40738名)、建物被害4805世帯、物的被害額約1040億円、避難所は震災直後で69カ所5169名というのもまだ調査途中で最終的には4000億円の被害額には達するだろうという被害を被った大船渡市では地震発生時は市議会の最中で、そこからすぐに議会を中止し災害対策本部を設け避難所や炊き出しといった対応を行いました。

3月11日のうちに自衛隊の第一陣が到着し、翌12日には自衛隊が活動開始、各地自治体の消防隊や警察の広域緊急援助活動、災害ボランティアの受付なども本格的に動き出し、13日には米国・英国・中国の救援隊が到着し避難所全箇所の状況把握完了という三日間だったそうです。

その後も今日まで避難所、事業所を訪問しての市の方針説明と要望のヒアリング、ヒアリング内容への市災害対策本部会議の対応の指示、国会・政府来訪者への現況説明と要望の伝達、各種メディアを通しての情報発信などを行ってきました。

避難所へは3月11日から炊き出しの配達を開始、3月14日から全69カ所への避難所訪問を開始。一週間目は食料・水・生活物資の不足が、二週間目から三週間目にかけてはガソリンと灯油の不足があったものの、自治体・企業・団体・個人からの物的・人的支援によって4月以降からは炊き出しなどの栄養面、入浴サービス、プライバシーの確保、保健・医療・介護・心のケア相談などによって生活の質が改善されていきました。
ライフラインについては、電気が被災地を除き三月末に復旧、水道・下水道が被災地を除き四月末復旧、電話が四月末復旧、道路は一週間で開通、バスは四月上旬から無料バスが8路線運行し、被災事業所の電気・水道も9割方復旧しました。

事業所へは3月28日から訪問を開始し、八割方が事業再開に前向きであるそうです。現在失業状態にある市民は約25%(約5000人)いるそうで、早期の事業再開を急務と考えており、被災者緊急雇用、被災事業所への電気・水道の復旧、仮設店舗・事務所・工場建設、中小企業組合への事業再開支援、被災事業所の修理費補助、二重債務問題の解決などの対応を急いでいます。

仮設住宅建設に関しては3月15日から指示を出し、雇用促進住宅、民間アパート・貸家、公舎、公的仮設住宅などの対応をしています。公的仮設住宅は1800戸を計画し、7月下旬(もう近頃の話ですね)の入居完了を予定しています。ここでは課題としてコミュニティづくりや生活の利便さ向上を掲げています。

その一方でガレキ撤去作業を進めなくてはなりませんが、震災発生時から三月末まで捜索活動を3回実施し遺体の発見が極めて少なくなった事から四月初めからの一週間を周知期間とし、4月11日から撤去作業を開始しました。7月20日までの時点で約70%のガレキが撤去され、八月末までには終了する見込みを建てていますが、破損家屋の解体・撤去作業については年度末頃までかかりそうだという見通しです。

この震災を受けて国の対応としては、3月15日以降に国会・政府関係者が多数訪問し、5月2日に約四兆円の一次補正予算が緊急対応型予算1として国会を通過しました。6月25日には復興構想会議が政府へ提言書を提出しており政府は7月末までに復興方針を策定予定、7月15日には二兆円の二次補正予算が緊急対応型予算2として国会提出されましたが本格的な復興型予算は9月に国会に提出予定で、国の遅れを受けて地元での動きにも鈍りが出るような状況があります。

そんな現状の中、復興計画では全体目標として「津波が来ても人は死なない、家は流されない」という原則を掲げ、大船渡市が大災害を乗り越え、よりよいまちとして再生する事を目指しています。復興を単に「元の状態に戻す」とだけ考えるとすると、そこには高齢化、漁業・農業・林業の跡継ぎ難、一次産業の低迷、地域経済の低迷、少ない職場、若者の流出、少子化などの3月11日以前からも抱えていた課題が残ります。そういった課題を乗り越える事も含めて、復興を考えていかなければなりません。

復興計画の基本方針としては「市民参加」と「4つの柱ー市民生活の復興、産業・経済の復興、都市基盤の復興、防災まちづくり」を立てています。ワークショップや地区懇談会を開き復興計画の骨子案を7月8日までに定めており、それをもとに復興計画の策定を9月中に予定しています。

このように、戸田公明氏に大船渡市の現状と復興に向けてのこれからの姿勢についてお話いただいた後、塩崎賢明氏による阪神淡路大震災の経験を生かす提言をお話いただきました。

塩崎氏は1995年に起きた阪神大震災以降、その復興を神戸で見続けてこられ、今回の震災では大船渡の復興策定委員会のメンバーにもなっています。

講義内容は、まず「復興」をどう捉えるかについてのお話から始まります。「復興」では具体的には被災者の生活の再建、地域の再興を目指してゆく事になりますが、東日本大震災を経て復興の基本理念などについて定められた「復興基本法」では第二条において「一人一人が災害を乗り越え豊かな人生を送る事ができるように」と定め、生活と地域を、ただ元の状態に戻すだけにとどまらない再建・再興、創造的復興を目指すと宣言しています。

ただ、阪神淡路大震災では「創造的復興」に向けて様々な事が行われましたが、そのすべてが必ずしも上手くいったと言えるかは難しいところがあります。

例えば神戸空港を建設する事もそのひとつですし、高速道路などのインフラの再整備も素早く行われましたが、本当にそれでよかったと言えるのか。例えば高速道路を例に取ると、震災前から公害という問題を抱えていたものを、それを克服する事なく、問題を抱えた状態のところにまで「元に戻し」てしまった、果たしてこれは創造的復興といえるのか。例えばアメリカや韓国には高速道路を撤去して親水空間などのアメニティを整備したような事例もあり、そういったところに学ぶ事が出来たのではないか、少なくとも今回の「復興」では闇雲に「元に戻す」を目指すだけではいけないのではないか。

また、復興に伴う再開発でつくられた集合住宅+商業スペースといった建物でも、箱だけはかなり大きく出来上がっているけれども商業スペースが活気ない状態であるのに中に入っている店舗が廃業さえ出来ないような状態に陥っているようなものもあります。

仮設住宅においても、たくさんの仮設住宅はつくられたけれども、元々住んでいた地区の近くにつくる事が出来なかった事や抽選でバラバラに入るので人間関係が分断されてしまう事、高齢者や一人暮らし、無収入者などが優先して入居できるという、むしろ心を配った配慮が仇となり、そういった人々が集まって住む事で活気や人間関係のない生活の中での孤独死が多かった事など、多くの問題がありました。

そういった「復興災害」とでも言える事態が①大規模開発の失敗、②孤独死、③震災障害者、④アスベスト被害、⑤借上げ公営住宅からの撤去問題、と大きく5つ挙げられますが、それでも全てを把握しているとは言えず、震災から十六年たっても問題だらけです。大きく一直線に「創造的復興」状態を目指す事でこのように光と影をつくってしまうような復興を目指すよりも、収入などの面も含めて元の生活を素早く元に戻した上で、徐々に創造的な復興を目指す、というやり方をしていった方ではいいのではないか。

例えば、仮設住宅から恒久住宅への連続復興という課題があり、仮設住宅よりも質の高い自力仮設住宅を金銭的に援助する事は災害救助法で可能なはずであり、その援助をもって恒久住宅確保への道を支援するという方法があります。仮設住宅を回していくシステムそのものを転換していく事が必要ですあり、自力でやれる人をどこまで増やせるかという課題があります。こういった課題について、うまく対応した例を沢山挙げて解説していただきました。

ディスカッションでは講演をふまえ、テーブルごとに議論を深めました。

質疑応答の時間では「東日本大震災の復興計画には阪神淡路大震災における神戸空港みたいな再開発事業はあるか」「復興災害に陥らないためのチェックリストのようなものはあるか」「大船渡市の高台移転でゼロレベルはどれくらいで考えているのか」「大船渡市で災害直後スピーディーに動く事ができたのはマニュアル以外には何か要因があったのか」「大船渡市に3月13日に救援に来た米、英、中は誰がまとめあげたのか」などの質問が寄せられました。(斧澤)

ディスカッションのメモ
0723.pdf[pdf:3.3Mb]

1)講義内容について
テーマ:地域を再興する
日時:7月23日[土]13時〜
講師:戸田公明[大船渡市長]+塩崎賢明[神戸大学大学院工学研究科建築学専攻教授]
司会:小野田泰明[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻教授]
内容:レクチャ+ディスカッション+質疑応答
場所:せんだいメディアテーク1Fオープンスクエア

2)次回講義について
テーマ:情報を共有する
日時:8月20日[土]13時〜
講師:渡邉英徳[首都大学東京システムデザイン学部准教授]+濱野智史[株式会社日本技芸リサーチャー]
司会:本江正茂[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻准教授]
場所:東北大学工学部センタースクエアDOCK

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