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[復興へのリデザイン]0. 津波を理解する

2011.05.24

2011年05月14日[土]、「復興へのリデザイン」初回、津波工学の今村文彦・東北大学教授による講義「津波を理解する」をせんだいメディアテーク1Fオープンスクエアにて実施しました。



今村先生は東北大学災害制御研究センターの教授であり、津波工学が専門です。
今回は「津波を理解する —我が町、自分を知る」というタイトルでお話頂きました。

まずは津波について。
津波の発生原因は様々で、9割は地震であるものの、地滑り、火山の噴火、隕石の衝突でも津波は発生するそうです。
史上最大のものではアラスカ州リツヤ湾で500mを超える津波が確認されているとも。
海底プレートの断層運動による津波発生のCGや津波の伝播モデルを用いて非常に分かりやすく説明して頂きました。

次に津波被害の歴史について。
災害の6〜12%を占める巨大災害が犠牲者の90%以上を占めるというのには驚きです。
明治三陸大津波、昭和三陸大津波、1960チリ津波といった三陸や、1964新潟、1968十勝沖、1983日本海中部地震津波といった日本海側の津波災害による被害の特徴とそれによる方策を紹介してくださいました。
また869年貞観地震では東日本大震災の津波被災地近くまで同様に津波が来ており、歴史書「日本三大実録」にはこの貞観地震において、発光現象、地割れ、倒壊、津波、多くの溺死者などが記録されているそうです。仙台平野で実施したジオスライサーによる津波堆積物調査によると貞観津波の規模の津波は1000年に一度の頻度で3事例ほど確認されているそうです。
仙台沿岸の歴史においても、伊達政宗が仙台の都市を整備していた最中の1611年に慶長地震津波が起きているため、今も残る貞山堀や防潮林は津波の際の壁となるようにも計画されたのではないかとのことでした。

そして最後に311東北地方太平洋沖地震について。
本震はM9.0を記録し、500km×200kmものアスペリティ(固着域)が滑ったそうです。余震活動は今後も長期にわたり、周囲に連動する可能性があるそうです。震災直後と比べて余震活動は落ち着いているものの、M7〜8級の余震が来る恐れがあるそうです。

まとめとして、
災害は繰り返されるため、過去を知る事が大事で、歴史やメカニズムを理解することが重要です。一方で現在の技術で守らなければならないものもあります。大きな堤防は実際津波の到達を遅らせました。
人間は常にバイアス(偏見)を持っています。2010年チリ地震で津波警報で避難した住民がわずか1%であったように、皆「自分は大丈夫」と思ってしまいがちです。このバイアスを取り去るのが「学び」なのです。したがって私たちは他ならぬ生きる為に、学び続けなければならないのです。

レクチャのあとはテーブルごとにディスカッション。

ここまでのレクチャを受け、考えた事、疑問に思った事などを話し合ってもらい、最終的には質疑のための質問をテーブルごとに考えてもらいます。

このテーブルディスカッションは今村先生も参加して下さいました。

ディスカッションはSSDの受講生にもリードしてもらいました。

質疑応答では活発に質疑が交わされました。
ここでは一部を紹介します。

質問1:東日本大震災級の津波がまた来る可能性はあるのか。
M9級の地震は数百年は来ないのではないか。しかし余震で1〜2mの波が来る可能性は高い。現在、防潮堤や防災無線が破壊されているため、心構えが非常に重要である。

質問2:津波のシミュレーションを公開できないのか。
30年前は解析するコンピュータがなかったが、近年ビジュアル化が可能となってきた。情報は基本的にオープンにするべきである。むしろ昨年までは関心の方が高くなかった。

質問2:沿岸部のこれからの都市計画について、防潮堤の高さを高くしていくの
か、あるいは他の方法があるのか。
あくまで仮説ではあるが、沖合の発生地点では津波の高さは高くないので、沿岸部でメガフロートなどで津波を押さえる事ができるかもしれない。

質問3:東部道路の堤防効果について。
沿岸から2〜4kmという位置も重要であった。沿岸にあれば破壊されただろう。後背地へは高い壁となった。

質問4:田老の堤防は意味があったのか。
破壊はされたが、破壊された事で津波のエネルギーを一部抑えたと考えている。しかし人命を守る目的は達せれていない。これからどうするかのアイデアが必要。

質問5:さまざまな災害のリスクに懸念は?仙台において火山など他の災害のリスクは?
日本は様々な自然災害に囲まれている。ある程度のハードの鎧は大事だが、より重要なのは知識や教育というソフト面での防災である。

質問6:1000年後も忘れないための方法は?
次の世代は体験が間接的であり忘れてしまう。ヒロシマなどのように遺構そのもののモニュメントが必要ではないか。

質問7:災害の教訓について。
日本の防災教育の黎明は関東大震災であり、当時は火事災害が最も被害が多かった。阪神大震災では建物の倒壊、結果耐震制度が見直された。中越の地震では土砂災害。それぞれ備えが異なる。

質問8:コミュニティについて。
行政に頼るのみでは確実性に欠ける。いかにコミュニティ単位で自立できるかが大切である。学校の防災訓練に地域住民を加えてもよいのではないか。

質問9:津波被災地に残る汚泥は一体何なのか。どのように海から来て、津波が来た後の海はどうなっているのか。
基本的に海底は砂が多いのだが、湾には泥が溜まっており津波の際はこれがうち上がる。また陸上の田畑を削り、それも内陸の奥まで運んでいた。また現在の海底は残骸や漂流物は浅い部位にはあまりない。同様に砂もなく、固い岩盤が露出しているようである。

質問10:津波を受け流すようなまちづくりの可能性について。
地域単位では見た事がないが、高知にある、とあるまちの避難所は高台の砂山にあり、コンクリートの堤防を流れに対して流線型につくっていたという事例がある。

質問11:想定の閾値について。
二つの視点がある。ひとつは最大規模の災害から命を守ること。もうひとつは50〜100年の周期の災害に耐えるまちづくりをすること。

質問12:松島が被害が少ないのはなぜか。島の配置が影響したのか。
湾の手前の島々が津波を反射・干渉した。また、松島湾は浅く、共振がなかった。線状の防波堤で守るのではなく、点々とした島で守られたと考えられる。ただしこれはある程度の規模があったことが大きい。

津波のメカニズムと災害の歴史について、非常に分かりやすいレクチャでした。
今村先生ありがとうございました。
(阿部)

1)講義内容について
「津波を理解する」
講師:今村文彦[東北大学大学院附属災害制御研究センター津波工学研究分野教授]
司会:本江正茂
内容:レクチャ、テーブルディスカッション、質疑応答

2)次回講義について
「復興を設計する」
日時:6月11日(土) 14時~
講師:本江正茂+五十嵐太郎+石田壽一+小野田泰明+堀口徹[東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻/SSD担当講師]
場所:せんだいメディアテーク オープンスクエア

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