2010.12.02
2010年12月1日PBL本江中西スタジオの3回め、エスキスを実施しました。
前回のフィールドワークをふまえ、グループごとに問題意識とそれに応えるストーリーの発表をしてもらいました。
Bチームは、都市交通の《余白》をコンセプトとして、無印良品の広告、イワタ新ゴシックのタイポグラフィ、住まいにおける床の間、などの事例から《余白》の価値を紹介し、都市交通における、時間、感情、利便性などの《余白》を提案できないだろうか、という発表でした。
グループの興味の対象としてユニークで面白くなりそうな反面、次のステップとして抽象的な議論を具体的なモノに落とし込む作業が要るのではないか、などの指摘がありました。
Cグループは、フィールドワークとグループディスカッションをふまえ、地下鉄の移動体験の乏しさを指摘した上で、仙台市営地下鉄の駅の個性化をソフトとハードをトータルにデザインしようという提案。
比較的完成度は高かったものの、問題設定の切り口に新規性がないとの厳しい指摘がありました。既存のシステムや思考の枠組みそれ自体をラディカルに考え直すことはこのスタジオの目的のひとつです。
ちなみに、今回本江先生が紹介していたロンドンの地下鉄の地図はこちらです。
これは1931年にロンドン交通局の電子回路の技術者であったハリー・ベックが考えたもの。路線ごとに色分けし、角度を水平垂直45度に制限し、駅を等間隔でレイアウトしたこの路線図は、いまや当たり前のように見えるかもしれませんが、当時の地下鉄の路線図といえば地上の地図にそのまま駅名を描いたもので非常に見にくかったらしく、抽象化するというアイデアがとても画期的だったそうです。
地下鉄という新しい交通システムの登場が、地図という「世界の表象」、すなわち私たちの世界の捉え方を変えた瞬間なのだ、というと言い過ぎでしょうか…。
http://britton.disted.camosun.bc.ca/beck_map.jpg
via:wikipedia [http://en.wikipedia.org/wiki/Harry_Beck]
さて最後はAグループです。
Aグループは高齢者を対象として高齢化社会の交通システムについて関心を持っているという内容。目的地への移動のためではなく、バスに乗っていることそれ自体が目的の老人のエピソードなど。
こちらも、高齢者のための交通システムといった「社会的に正しい問題」を取り扱う際は、既存の問題の枠組みにおさまらないように、意識的にアイデアを遠くに投げることが大事です。2050年の社会は4割が高齢者となるそうですが、たとえば9割が高齢者の都市を想定してみると新しいアイデアが広がるかもしれません。あるいは似たものを探す。社会的弱者と呼ばれる存在を大切にする、と考えれば対象は高齢者にとどまらないはずです。
さて、次回は12月8日18:30からエスキスチェックをします。今日の議論をふまえ、12月17日の中間講評会にむけてグループごとに案を展開させたものを持ってきて下さい。(阿部)
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1)講義内容について
・エスキス
グループごとに問題と提案の発表と講評
2)次回講義について
日時:2010.12.08[水]18:30-21:00
場所:製図室プロジェクトスペース
講師:阿部篤
内容:中間発表にむけた提案のチェック